この世は舞台。名刺はショーへの招待券。紙モノデザインの考え方と作り方。

この世は舞台。名刺はショーへの招待券。紙モノデザインの考え方と作り方。

イラストレーターの印象が強いオバマだけど、肩書きはずっとデザイナーなんだよ!
Webも紙もやるんだよ!
というわけで、しっかり作り込んで名刺を新調しました。

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:アール・デコ風と大正ロマン風。

意識したポイントは

  • ストーリー性。理由のあるデザイン。
  • 表と裏でテイストが違う(幅を見せる)
  • かつ、見える所・見えない所で統一感を持たせる

です。

これ、自分史上最高に頑張って作った名刺かもしれない。
だけど、自分史上最高の悪ノリで作った名刺かもしれない。
制作中もなかなか反響あったしね。

ではでは、考え方と制作手順をご紹介します。
主に考え方ですね。
このページには、ツールの使い方の説明は一切ありません。

まずはコンセプト決め

この世は舞台。名刺はショーへの招待券。

ある日ふと、こう思ったんです。

人生ってお芝居みたいなもんよねぇ。
自分を主人公にすると、どんなストーリーで、今どんなシーンなんだろう?

シェイクスピアも、たびたび台詞に言わせていました。

この世はすべて舞台だ。
そして男も女もその役者に過ぎない。

ウィリアム・シェイクスピア『お気に召すまま』(原題:As You Like It)

そして妄想ぐるぐるタイムが始まります。

「私が演じているのはどんな役?」
「デザイナーって、どんな役?」
「デザイナーは、人に感動を届ける役」
「デザインってエンタメだよねぇ」
「ああ、名刺切らしてたんだ。作らなきゃ」
「なら、名刺のデザインをお芝居にすればいいのでは?」
「デザイナーとお芝居の関係って?」
「デザイナーは、クライアントやその先にいる人たちを楽しませる、劇作家みたいなもの」
「ということは、名刺はその舞台へのチケットだな」

(※全部頭の中の独り言です。)

こんな感じで、数分間の一人脳内会議の末に
「私が提供する舞台(デザイン体験)のチケット(差し上げる物なので招待券)」
というコンセプトが決まりました。

ところで、「チケットっぽい名刺」ってどんなの?

チケット「っぽい」ってなんだろう?

ステレオタイプを探せ!

見た目は千差万別のチケットですが、共通点があります。
必ず入るのは、タイトルと日時と場所。
それだけは、世界のどこだろうがどの時代だろうが一緒です。

だけど名刺に固定の日時と場所は入れられないし、かといって全く時間と場所の要素がないチケットなんてチケットらしくない。

だいたい、入れる要素といえば

  • 名前
  • サイトのURL
  • QRコード
  • SNSアカウント

くらいです。
何より一目でそれと分かってほしい。

お手上げな時は、ひとり頭の中で悩んでも仕方ありません。
インターネットに相談です。
「チケット デザイン」「ticket design」で画像検索をかけてみると、出るわ出るわ
アール・デコ風の結婚式の招待状!
名刺、絞ってみても見当たらない!
(※アイデアを集める時は、複数言語使うと幅が広がって良いです。)

歴史の話:アール・デコの時代

アール・デコといえば、1920〜1930年代に隆盛を極めたデザイン様式。
適度にシンプルで適度に複雑な装飾と幾何学的模様が特徴です。
アール・デコのデザインをPinterestでチェック

レオナルド・ディカプリオ主演映画で有名な『華麗なるギャツビー』の時代。
流行の中心が欧州からアメリカへ移り始め、ニューヨークの摩天楼ができた頃ですね。
あのビル群の建築様式もアール・デコです。
ジャズが大流行したり、ミュージカル映画が誕生したりと、現在のアメリカ文化に繋がる動きも出てきます。

また、この時期、フランスへも様々な文化人が集まっていたのですが……
長くなるので割愛。

要は世界的にそこそこ経済的余裕のある人が増え、エンタメが大いに発達していった時代です。(雑)
だからこそ、デザインのステレオタイプが出来上がっていて、資料も多く「それっぽさ」が出せるという。(超雑)
お芝居よりもショーが流行っていたみたいだけど。

一方、日本では大正ロマンの頃

一方の日本では、アール・デコやロシア・アヴァンギャルド(ザ・ソビエトなカクカクしたやつ)の影響を受けながらも、和洋折衷独自スタイルのファッションとデザインが流行していました。

竹下夢二の乙女チックなイラスト。
モダンボーイ(モボ)とモダンガール(モガ)。
シンプルで力強くて優美だけど、手書きのレタリングがちょっとゆるくてかわいいデザイン。
なんかあの、一目見ればわかるやつ。(やっぱり雑)
大正ロマンのデザインをPinterestでチェック

こうなったのは文化的背景ももちろんあるのですが、
文字ごとに高さや横幅が違うローマ字と、四角形に収まるつくりの漢字かなって、
そもそも美しく見えるバランスが違うんです。

Appleのサイトとか、英語で見たらかっこいいのに、日本語になった途端「ダサい…」ってことありません?
これがベースになってるローマ字文化と漢字文化の影響です。
よく言えば、この差が独自性を生むんだと思います。

ちなみにこの頃の上海は「魔都」と呼ばれるアジア最大の都市で、ナイトクラブやショービジネスが栄えていたらしいです。
やっぱりショーの時代。

よし、1920〜30年代風の名刺を作ろう!

というわけで

  • アール・デコ風はレトロ系チケットデザインのステレオタイプ。
    • よくあるテーマ。つまり分かりやすい。
    • チケットデザインの資料が見つけやすい。
    • レイアウトも考えやすい。
    • 幾何学模様がデジタルっぽい
    • URLやSNSアカウントなどのローマ字情報が美しくまとまる。
    • ローマ字表記向き(日本語入れると雰囲気台無し)
  • 裏面を大正ロマン風にすれば、表裏でデザインの幅を見せられる。
    • 同時代モチーフなので、分かる人には統一していると分かる。
    • 日本語表記向き(こっちは英語入れてもよさげだけど)
    • チケットデザインの資料が見つけにくい。
      →新聞広告の資料は見つかる
    • 必要情報は表面だけで完結しそうなので、入れる内容に悩む。
      →人柄を伝えるのもまた名刺。人柄を語ろう。
  • 両面で英語表記/日本語表記を分ければ、外国の人にも迷わず渡せる。
    明星和楽2019でお渡しする機会がありました
  • 近代史好きにピッタリ(局所的にオタクです)

そんな理由から
表面:アール・デコ風
裏面:大正ロマン風

でデザインすることにしました。

表面:アール・デコ風を作ろう!

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:アール・デコ風のAdobe Illustratorでの制作風景。

必要な情報をチケットに当てはめよう。

表面に載せる情報をチケットのそれに当てはめていきます。

  • 舞台のタイトル→名前
  • 公演場所→SNSアカウント
  • 装飾っぽいもの→QRコード
  • キャッチフレーズ→活動コンセプト
  • クレジット→できること
  • 日時→?

やはりここで困ったのが、名刺には日時に相当する要素がないこと。
実際の演劇チケットはここを空白にしておいて、後で公演日時を手書きしたりもするのですが。

人間関係って、お芝居と違って期間限定じゃないんですよね。普通は。
終わりなんて、出会った時点では誰にも分からないし。
ましてやコンタクト回数の制限もない。

それなら「フリーパス」にしちゃえ!

ちょうど2019〜2020年の境目だったのもあり、
「Free Pass Active Since 2019/2020」
(フリーパスは2019年 or 2020年から有効)
の形で、無理矢理時の要素を入れ込んでみました。

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:アール・デコ風の初期デザイン。

うん。
フォントは選んだし、なんとなくそれっぽいけど、無機質で寂しい。
ここからアール・デコらしくなるよう、装飾を追加していきます。

資料はリアリティーの素。参考にしながら装飾を作ろう。

そうは言っても、アール・デコ風なんて作ったことありません。
作った経験があったとしても、現代と比べて相当複雑な装飾です。
感覚が掴めないうちは自己流は危険。
どんなに美しい見た目でも、リアリティーを失うだけで中途半端になってしまいます。

そこで困った時のPinterest!
資料画像を見まくり型を覚え、パクリにならない程度にヒントをいただきましょう!
守破離って多分そういうことです。

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:アール・デコ風のデザインサンプル。

装飾を追加し、バランスを調整してこうなりました。
名前→導線→その他の情報
の順に目が行くようにしています。

さて。次は裏面です。

裏面:大正ロマン風を作ろう!

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:大正ロマン風のAdobe Illustratorでの制作画面。

絵描きだから、自画像を入れよう。

とはいえ私は絵描きです。
文字が主だった表面に対し、裏面には自分のカラーがわかる要素を入れたいもの。
そこで登場したのがゆる〜いSNSアイコン、自画像です。
これをメインにした理由は以下の通り。

  • TwitterなどのSNSアイコンと同じなので覚えてもらいやすい
  • 実物の顔も覚えてもらいやすい
  • 色味が自分らしい
  • 表面がマジメすぎる分、ユルくて力が抜ける

大正ロマンな文字は手書き。

名前の文字も資料を見ながら手作業でレタリングしました。
本当はフォントを使いたかったんですが、イメージに合うのがないし、あっても有料だったり商用不可だったりするんですよね。

いちいち商用可・不可を覚えるのが面倒なので、私は商用不可のフリーフォントはインストールしないようにしています。

デザインは中身が大切。次に目に見えるところ、色味。

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:大正ロマン風の初期デザイン。

けど、なんか違う。
表面と同じにした枠線の色が暗い。納得いかない!
しかも下半分が空白。
これはガワから入ったデザインの敗北…!

ほら、デザインって「情報が主役」だから。
「情報をいかに伝えるか」だから。

そういえば作る前に
「裏面ではパーソナリティーを語る」
と決めていたのでした。
じゃあどんな情報を伝えよう?

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:大正ロマン風の修正デザインと自己紹介。
  • 私といえば「旅するお絵描きミニマリスト」。
    (いつも離陸待ちだけど!)
  • 「こんな人間ですよ〜」と価値観を語ろう。
  • しれっと「Web見てね」とも言っておこう(笑)

まあ、こんな感じかな。
資料の多かった新聞広告風にまとめました。色も明るく。
チケット裏の広告っぽくもある。

一通りできたらテストプリントしよう。

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:アール・デコ風と大正ロマン風を家庭用プリンター(プロセレクション PX-G5300)でテスト印刷したもの。

文字の読みやすさ、イラストの大きさ、全体の雰囲気と余白……。
画面で見た時と紙で見た時の印象って違うものです。
だから必ずプリントしてチェックしましょう。
名刺サイズ非対応ならA4用紙でも構いません。

色は参考程度に。
これはプリンターの調子が悪くて両端の色が薄まってます。
10年頑張ってくれたプロセレクション、さすがに寿命かも。

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:アール・デコ風と大正ロマン風を家庭用プリンター(プロセレクション PX-G5300)でテスト印刷したもの。

オレンジと黄色両方だとうるさかったので、オレンジか黄色のどちらかに絞ることにしました。
黄色の方がスッキリしそう。
ただ、これでもまだメリハリに欠ける。
調整は続きます。

データができたら印刷会社に発注しよう

データができたら印刷会社に発注し、入稿します。
紙質にもよりますが、100枚で1,000円〜2,500円程度みておけば、十分高品質な物が手に入るでしょう。

  • グラフィック(とにかく高品質で安心。お値段は高め。)
  • 名刺21(知人の名刺専門職人のイチ推し。安くてキレイなのだそう。)

このあたりがオススメです。

最終的に仕上がったものがこちら。

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:アール・デコ風と大正ロマン風。

家のプリンターで悩まされた色の薄まりやゴミ・ズレもなく、無事に仕上がった名刺が納品されました。
写真ではお伝えしにくいのですが、色も鮮やかです。

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:ファンシーペーパーでより一層大正ロマンの雰囲気が増す。

これまた写真ではお伝えしにくいのですが、ファンシーペーパーのおかげでレトロな雰囲気が増しています。
黄色が若干読みにくいのはわざとです。
昔の印刷物やレトロ風なZINEって、たまに本文が色鮮やかすぎて読めないのとか、ない?

データで見るとこんな感じです。
「クリエイタ」はやりすぎたかも。

デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:アール・デコ風のサンプル。
デジタルクリエイター/イラストレーター/グラフィックデザイナー/Webデザイナー/旅するお絵描きミニマリスト、オバマエリカの名刺デザイン:大正ロマン風のサンプル。

おまけ:裏面のSNSアイコン効果。

SNS上での見つけやすさ、顔の覚えてもらいやすさを狙った裏面の自画像。
以前メインビジュアルイラストを描かせていただいた劇団のキャストにお渡ししたら驚かれました。

「Twitterでよく見るアイコン!!!」

時々脚本家の伊藤高史さんにいいね&リツイートいただいてるので、それで覚えられていたみたいです。
おそるべし伊藤さん。
Twitterが基本的に脳内垂れ流しなの、ちょっと改めようかと思いました。
一瞬だけ。